Knot買うてん
腕時計をする目的は何か。
私は現在の正確な時刻を知ることだと考えている。
したがって、現在の正確な時刻を知ることさえできれば、腕時計をする必要はないと思う。
しかし、現実はそうではない。
腕時計は時を知るという目的を超えて、その所有者のステータスを示し、キャラクターを表す、セルフブランディングの機能を持っている。
腕時計が世間ではそのような位置付けのものになっているため、私はこれまで多くの機会を逸失してきたかもしれない。
そういった女性と懇ろになるのかという話は小脇に置いておいて、身に付けている腕時計でその人を判断する女性は一定数存在するだろう。
初対面など相手の素性がよくわからない場合において、腕時計が収入や金銭感覚、価値観、センス、趣味嗜好を示すシグナルとして機能することは疑いの余地がない。
その人を判断するのに時間的猶予がない場合には、そのようなシグナルを頼りとすることにも合理性がある。学歴と同じである。
そんな私がこれまで着けてきた腕時計は、ビックカメラのステンレスラックにぶら下げられている、中国製のセイコーALBAである。柔らかいプラスチックのケースに入っていた。
セルフブランディング機能を除いて時計本来の機能から見ると、この時計で全く不満な点はない。
むしろ3,980円だからガシガシ使っても何も気にならないし、高級品を身にまとうよりは心理的負担を減らしてくれている。
そんな私に何があったのか。
どんなマーケターがどんなアプローチをしたら、機械式腕時計市場に一人の若者を参入させることができたのだろう。
それは私にもわからない。消費者は自分のことがよくわかっていないのだ。
わからないなりに考えてみると、
・後輩女性からの指摘
・腕時計を除く他のアイテムとのバランス
が大きく寄与したのではないか。
みすぼらしいアパートに青空駐車されている高級外車は見ていて悲しくなる。
一点豪華主義が悲しいのは、トータルコーディネートが考慮されていないからである。
その逆もまた然りで、ALBAが仲間外れにされるようなことがあってはならない。浮いているとそこが強調されてしまい、バランスを失う。
折しも私はアラサーであり、20代から30代への転換期を迎え、これまでの新卒ルックと決別しなければならない時期であった。シャツやスーツはくたびれ、新しいものを新調する時期でもあった。
こうして機械式腕時計市場に参加した私は、本日見事、市場のパイを拡げた。
この新興ブランドをご存知だろうか。
メイドインジャパンにこだわり、またUNIQLOやJINSに代表される製造小売の手法を取り入れた会社である。
そのKnotのフラッグシップモデルがこちらのAT38である。
美しくシンプルな文字盤に、
裏蓋がシースルーで機械式時計の醍醐味を目で楽しむことができる一品である。
さらにこのブランドの特徴として、腕時計のベルトを交換することができる。
私はこれが1本目の機械式時計だったので、正統派の文字盤に正統派のベルトを合わせてみた。
これで締めて52,704円。
これを高いと見るか安いと見るか。
質はいいとは思うけど、なんせ知られてないので名前で威張ることはできないだろう。
あと気になったのは、31日周期なので日付合わせをしないといけない月があることと(これを面倒だと思う人が機械式時計を買っていいのか?)、耐磁性を有しているかどうか。
店員さんによると最近の傾向として、パソコンやスマートフォンの近くで使用して磁気を帯びてしまって、修理を依頼するケースが増えているんだそう。
これがフラッグシップモデルにも当てはまるケースなのかは不明だけど、価格面はもちろん、こういった機能面から見てもいわゆるロレックスとか有名ブランドとは戦ってる場所が違うのかなーと思いました。
中村英彦